投稿日:2017年08月28日

事務局通信92-2 補稿

 様々なハンディを持っている人も働くことで社会に関わり、その人なりに立っていくことにつながります。ハンディのあるなしに関らず「(その人なりに)働く」という営みからできるだけ排除しない社会の方が、本人も社会から孤立せず、社会保障費増加の抑制にもつながります。
 ただ、「働く」ことを「一般雇用契約に基づく労働」に限定してしまうと、労働の成果が最低賃金に見合わない人は排除され、働くことができなくなるため、最低賃金には見合わないけれど(その人なりに)働くことができるような中間的な就労の場が必要になってきます。

 就労継続支援A型事業も、「通常の事業所に雇用されることが困難」である方を対象としているのですが、「一般雇用契約の締結」と「最低賃金の給付」を義務付けました。
 そのため公的資金(就労継続支援事業に対する訓練等給付金)の流用による賃金補填を認めなければA型事業所がなかなか増えず、認めると貧困ビジネスに悪用される、というジレンマに陥りました。
 「最低賃金は障がい者の方の生活保障のために必要である」という考え方もありますが、A型事業所の利用者の生活は保障されても、それ以外の方は保障されないことになり、公平さに欠ける面があります。生活保障目的で公的資金を投じるのであれば、障害基礎年金を拡充する方が、まだ公平性は高いかもしれません。

 また、公的資金による賃金補填施策としては「特定求職者雇用開発助成金(特開金)」という制度がすでにあります。例えば、重度障害者等を除く身体・知的障害者を一般雇用すると、2年間で120万円(短時間雇用は80万円)(いずれも中小企業の場合)が事業主に支給されます。A型事業所は、訓練等給付金だけでなく特開金の支給も受けており、いわば福祉施策と労働施策の両取りの状態となっています。
(ただし利用者の方によっては特開金の対象外とされる場合もあります)

 訓練等給付金の流用による賃金補填がなくても最低賃金を維持できるのが理想的ですが、事業収入だけで財源を確保するのは容易ではありません。
 利用者の方の振り分け(比較的作業スキルの高い人以外はB型事業にシフトする)や作業時間短縮(時給を下げずに賃金を減らす)による賃金総支給額の減額にも限界はあり、最低賃金の大幅な上昇が今後も続くことを考えると、撤退する事業所が続出することが予想されます。
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