投稿日:2021年12月09日

事務局通信~1か月の食費が7万円

2か月で約15万円の公的年金を受給し続けるために、夫が亡くなった後も井戸に遺体を隠し死亡の事実を隠ぺいしていた、という事件が報道されていました。
70代の奥さんと40代の息子さんとの3人暮らしだったというこのご家族が、夫の年金がなくなると生活が立ち行かなくなるほど経済的に厳しい状況にあったのか、詳しい事情は分かりません。

太陽と緑の会の作業所に通って来る様々なハンディを持ったメンバーさんの中にも、障害基礎年金や生活保護で生活を営んでいる方がいます。生活保護の場合は毎月1回(自治体によって支給日は異なる)、障害基礎年金の場合は偶数月の15日に2か月分が支給されます。支給日が近づくにつれ、通帳の残高もゼロに近づいてきて、「自分はこの先やって行けるのか」と精神的なバランスを崩してしまうメンバーさんもいます。
障害基礎年金の場合、1級なら2か月で約16万円、2級なら2か月で約13万円。その金額で1人暮らしの生活がやっていけないのか、と思われる方もおられるかもしれません。

あるメンバーさんは食費だけで1か月7万円以上かかっていました。1人で7万円の食費と聞くと贅沢な食生活を送っているように思えますが、詳しく聞いてみると、外食はしておらず、白ご飯やパンなどの主食とお惣菜、あるいはお弁当、それにお茶やジュースなどの飲み物、ちょっとしたお菓子程度のものしか買っていません。それでも1食800円、3食で2400円、1か月で7万2000円です。

日常的にスーパーで買い物をされている方であればイメージしやすいかと思いますが、値上がりがじわじわと進む中で、「なるべく安い店で、安いものを、安い時に必要な分だけ買う」といったように、ある程度考えて工夫して買い物をしないと、そのくらいの金額にはなってしまいます。
 もちろん、自炊ができるのであれば、このようなことにはなりません。お米を買ってきてご飯を炊く、麦茶パックを買って自分でお茶を作る、味噌と豆腐と野菜を買って味噌汁を作る。それだけのことでも食費はかなり減らすことができます。

 ただ「それだけのこと」が容易ではありません。子供の頃から「危ないから」と、自宅でガステーブルや炊飯器、包丁などの調理器具を扱う機会が少なかった (あるいは、全くなかった)メンバーさん(特に男性)もいます。多少料理はできたとしても、調子が悪くなると作れなくなってしまう当事者の方もいます。
そもそも自炊が困難な家庭で育つなど、調理の実践を間近で目にする体験がほとんどなかった方もおられます。

 先日お客様から精米済みのお米を頂いたので、一人暮らしのメンバーのAさん、Bさん、ハンディのある妹さんと2人暮らしのCさんに3キロずつプレゼントしました。Aさんは電子レンジ用の炊飯容器(リユース品)を太陽と緑の会で買い、自宅でご飯を炊くようになりました。年末年始の休みを迎えるにあたって、2回目のお米のプレゼントをしました。
作業所で週1回昼食のカレー作りの準備をしているCさんは、自宅でも休日にカレーを作ったりするようになりました。
ここに至るまでに5年、10年という長い年月の流れがありました。3か月や半年程度の関わりで結果が出ることはなく、将来結果が出る保証もなく、結果が出ても評価されることは少ない。割に合わないのが「本来的な福祉」なのでしょう。
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