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 鳴門教育大学の先生で、ソーラーカーを作っておられる宮下晃一さんが、以前、太陽と緑の会リサイクルを見学されたとき、「ここはちょうどノミの市ですね」と感想を述べられました。ドイツでの留学時代、よく「ノミの市」に行かれたそうで、「こんなもの売れるのか」と思われる不用品までが並べられ、ちょうどフリーマーケットのような即売会が開かれている、とのことでした。そういえば、足の一本ないテーブルやいす、片方だけの靴まで売っていると、どこかで聞いたことがありました。でも「一応、まだ再利用できるものを並べているつもりなんですけど」と、宮下先生に小声で言い訳しつつ、「そう言われると、そうかもしれない」と、妙に納得してしまう自分がありました。
 「市民の方々から、無料で回収させていただいた再利用可能な品物を、あるものは修理し、あるものは磨いたりして、一つ一つ値段を付けてもう一度使っていただく」。こう書くと「普通のリサイクルショップやないか」と受け取られがちですが、そこは宮下先生の眼力、「ノミの市」と表現されました。
 当たり前のことですが、普通のリサイクルショップでは経営戦略として、一坪当たりの売り上げや商品の回転率を考えます。 このため、場所ばかり取る家具類、人気のないガラクタや食器類、ブランドや高級という言葉から縁遠いもの、故障した電化製品、古本市場から外れた古本など販売ルートに乗らない品は、「ゴミ」として処分料を払って焼却されるか、埋め立てられるかの扱いを受けることになります。中には古紙として再利用されるものもありますが・・・。
 このような品も、徳島市国府町の鉄骨二階建てコンクリートパネル張りの、太陽と緑の会リサイクルの建物には、所狭しと置かれています。実は、この建物も、処分される予定だった建物のリサイクルなのです。
 「この中から,思いがけない品物との出会いが見つかるかもしれない」という期待を抱く方々がおられます。「掘り出し物はないの。何かいいものはないの」と、普通のリサイクルショップの感覚で来られる方や業者の方などは、値段と品物を熱心に見比べておられます。
 私たちの活動の中身を知って、贈答品などをそのまま提供してくださる方々もおられますが、そのような品物はほんの少ししかありません。また、これを買われてどう利用されるのかと、おもんばかる方々もあります。
 長年の観? で、まず品物として利用されることなく、解体して鉄類を資源として再利用するか、中間処理場で粉砕処理するかになるだろうと思われたものが、日の目をみることがあります。
 そんなとき、その品物にかかわったすべてのスタッフ、メンバーたちからの喜びの声が上がります。「回収したかいがありました」「よかったなあ」「ボツにせんといかんと思ったけど、うれしいわ」。それぞれの思いを抱きながら、一時の充実感が辺りに漂います。
 「物も人も一緒やなあ。しかし、あかんと思われた物が生かされたら、何でうれしいんやろか」
 「人も物も生かされる街づくり」を揚げ、さまざまなハンディを持ったメンバーたちの福祉共働作業所で繰り広げられる"難題"です。
(徳島市入田町月の宮)
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