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No.1 「世間の風」     杉浦 良

 今から二十年ほど前のことです。右も左も判らぬまま「障害者福祉」と「リサイクル」をリンクした活動を、徳島で始めるために、いろいろな方々とお会いして自分なりの思いをあれこれ言葉に置きかえていました。そこには「よく聞くとあなたの言っていることはハンディーのあるメンバーたちにとって、一般社会、つまり普通の会社や企業が一番いいってことかい?」「そういうことでもないんですが・・」と口ごもってしまう私がありました。なかなかいい言葉を見つけ出せずにいる私に「では、特別な障害者福祉はいらないってことだね。あなたのやろうとしていることと矛盾してるよ」。キリッとした言葉が、私の心に刺さります。今から始めようとしていることをイメージとして伝えることの難しさと、自分の未熟さが折り重なります。言葉をつなげばつなぐほど、自分のイメージとかけ離れてしまう感覚がありました。この答えを言葉として見つけるのに十五年ほどの年月が必用でした。
 「風が強すぎると倒れてしまうハンディーを持ったメンバーたちも、囲われすぎてしまうと自分の足で立てなくなってしまいます。半分は囲って、あと半分は『世間の風』が入ってくるように開け放たないといといけません。これがなかなか難問です。熱心な職員や理解ある保護者、献身的なボランティア、そして整った環境は当然ながら大切ですが、それと同時に、障害者福祉などとは縁遠い、普通の方々が出入りをされることで起きるさまざまな誤解や行き違いがかもし出すドラマと、暑いときは暑く寒い時は寒いと感じられる環境、たとえば『人』として生きるための、何かとっても大切な、ピリッと辛めのスパイス(世間の風)がないと困ります」。
 「渡る世間は鬼ばかり」「世間の風の冷たさよ」と嘆きながら、「世間も捨てたものじゃない」「人の情けのありがたさ」と、ホッとひと息つける環境づくりを障害者福祉という領域に持ち込みたかった訳です。子供の頃は「甘いカレー」ですが、大人になれば「辛いカレー」が似合います。(杉)


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