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徳島新聞「ぞめき」原稿   杉浦良
No.11 タイトル「へそ曲がりの抵抗」

 徳島駅前に自転車放置禁止区域が作られて二十年が過ぎました。放置される自転車の数が多くなり、歩行者や車椅子を利用される方などの通行障害になるばかりでなく、緊急車両等の進入妨害や、景観上の問題にもなりました。
 オランダ、ドイツに次ぐ世界第三位の自転車保有国(一人当たり)になった日本ですが、いろいろな対策がとられているにも関わらずその数が減らないばかりか、この二十年で撤去された自転車を引き取りに来ない方が増えてきたと聞きました。
 二十年前、国内で販売される自転車の輸入車割合は一%未満でした。十六年後に五十%を超え、今はむしろ国内産を探すのが大変になりました。十五年前には名前すら無かった中国産自転車は、十年後に台湾産を抜いて一位の座を勝ち取りました。価格破壊が起こり、十年前には二万円を切る自転車に「安い!」と喜んだ人たちもいましたが、今では一万円を切るのが当たり前になりました。
 パンクの修理代千円、後輪タイヤ、チューブの交換が四千円、前輪は三千円が交換修理料金の相場です。この価格は二十年前と変わりません。「タイヤがすり減ったら、捨てたほうが得よ!」と最近ちまたで聞く会話の原因は、安く輸入される中国製自転車にあるようです。引き取り手のない放置自転車の増加はどうもここにリンクしています。
 「人件費が二十分の一の中国だからできることよ!」はよいとしても、中国へ運んで自転車修理をするわけにも行かず、かと言って中国の修理技術者を日本に呼び寄せれば、生活費も含めた経費は変わりません。東京で放置自転車の撤去処分費用が一台あたり五千円ほど掛かり、鉄道会社に費用請求するというニュースもありました。
 たとえば新車価格七千九百八十円の中国製自転車を、五千円の費用で処分しなければならない日本の状況と、タイヤがすり減れば捨てるという現実が当たり前になりつつある「今」に、へそ曲がりの抵抗として、「昔のおじいちゃん達はパンクを自分で直すのは当たり前、ちょっと器用な人はタイヤ交換も自分でやるのが当たり前だったの!」と子供たちにブツブツつぶやきながら、修理に精出す私です。


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