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徳島新聞「ぞめき」原稿   杉浦良
No.31 タイトル「食品成分表」

 買い物リストに「ホウレン草」「ハム」「キュウリ」「ちくわ」「パン」「牛乳」「卵」とありました。スーパーマーケットで値段を見ると、ほうれん草一束が三百十八円、キュウリは二本で二百四十八円です。
 今どき、旬でない野菜を買うことの無謀さを感じつつ「これは何に使うの?」と尋ねると「この前買った冷麺を作るんよ」と答えが返ってきました。冷麺の袋にプリントされた完成図には、確かにホウレン草もキュウリも載っています。
 「ホウレン草やキュウリは普通いつ採れるか知ってる?冬と夏だよ。今のは高くて栄養も少ない。四季にはぐくまれた食べ物が日本人を育てるんだよ」と理屈をつけ、出しゃばる私です。
 そういえば昔から疑問に思っていた食品成分表が頭に浮かんできました。「冬と夏のホウレン草やキュウリが同じ栄養成分であるはずがない。栄養士の方がそんな成分表を使っているとしたら、それは信用できないね」などとブツブツあたり散らしていると「栄養より今食べたいものを食べることのほうがリッチじゃない?」と反撃です。「大体地球の三分の一の人たちは満足な食事が食べられないのに、やれダイエットだ何だと、日本はちょっとおかしいよ・・」などとオジサンの一人相撲が始まります。
 自分で言ったことには多少は責任を持たないと、と調べてみれば、最新は平成十二年暮れに五訂日本食品標準成分表として生まれ変わり、冬と夏のほうれん草のビタミンCは六十mg、二十mgと区別されているではありませんか?やはり旬は懐にも体にもベターです。
 ただ私の頭に浮かんだのは昭和三十八年の三訂成分表で、すでに時代遅れだったわけです。
 ほうれん草だけでなく近海サバと輸入サバなどにも成分に違いがあるそうです。時代に後れた偏見頭に自分で活を入れつつ、夏はナスにキュウリにピーマンにトマトにシシトウ、そしてスイカと頭に焼きついた旬の記憶こそ、「私」を形づくる大切なバックボーンだと、かたくなに自分の足元を見つめる今日このごろです。


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