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徳島新聞「ぞめき」原稿   杉浦良
No.37 タイトル「障害者自立支援法」

 昨年の十二月二十六日、厚生労働省は障害者自立支援法に基づく細かな発表を行いました。その中には無認可と呼ばれる全国六千個所に及ぶ障害者地域共同作業所の運命を左右する「地域生活支援事業について」が含まれています。
 今まで負の遺産と呼ばれてきた無認可作業所(約九万人の様々な障害者が利用)を、認可施設のエリアに組み入れていこうというものです。
 障害者一人当たりに使われる税金は認可施設を利用するのと無認可施設を利用するのとでは大きな隔たり(最大で約二十倍)があります。当然ながら公立公営施設ではこの差はもっと広がります。障害者本人の困難さの度合いとは無関係の格差は、衆参両議員の投票有権者数格差どころでない不公平感を生み出します。この隔たりは都道府県によって大きく違い、その意味ではさまざまな批判があるにせよ、格差是正につながる画期的な意味も含んでいます。
 建物が立派で、エレベーターなどバリアフリーの配慮がなされ、冷暖房も完全完備、職員も有資格者というのが、今の認可施設の一般的なイメージです。少々乱暴な言い方をすれば、無認可作業所は建物は狭くて古く、バリアフリーももう一つ、冷暖房も完備されていないところがあり、職員は障害者の保護者や定年退職者が多く、高齢主婦ボランティア等によって何とか支えられている、といったイメージでしょうか?
 ただこのことは無認可作業所を運営される方々の問題ではなく、投入される税金の少なさによるもので、中には少ない予算をやり繰りしながら、地域に根差した素晴らしい取り組みをされているところも少なくありません。ドイツから来た福祉関係者が、日本の認可施設でなく無認可作業所に注目されたという話を聞きましたが、その理由がそこにあります。
 そこにだけ注目すれば、障害者自立支援法は両方充実出来る可能性を秘めていることになります。ただ公的支援が多くなると、無認可作業所の取り組みが活発でなくなる傾向にある、とある助成団体関係者が思わずもらされた言葉に、「障害者福祉の難しさ」があります。


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