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徳島新聞「ぞめき」原稿   杉浦良
No.58 「障害者地域作業所最前線」 二〇〇六年十二月四日分

 ニューレオマワールドの近く、香川県綾歌町岡田に、手づくりパンとコーヒー豆の店「COSMOS」があります。三年前に焼肉屋さんだったこの場所を今のお店に改装されたのがNPO法人「シーズクリエーション」です。「共同作業所コスモスの家」として、主に精神障害の方々の働く場と集う場の確保を目的に、ほかにうどん屋さんと内職を中心とした作業所合わせて三ヶ所を運営されています。
 平成元年十一月から内職中心の法定外作業所として活動を始め、精神保健ボランティアとして参加された竹内さん(現副理事長)がかかわりだしたのが平成三年。紆余曲折を経て現在の形になりました。
 「大変なんよ、運営するのが」。見学の機会をいただいたときの開口一番の言葉です。「雨漏りも修理せんといかんし、冷凍生地を使わない無添加パンは、生地作りに最低五時間はかかり、コストも下げられんし・・。見学されても見るとこあらせんよ。働くメンバーさんの話を聞いたりするのは得意だけど、事業としてやるのは難しいねえ。もう逃げたいとよく思う・・」。そんなあっけらかんとした受け答えに、これまでの苦労が見え隠れします。
 「メンバーさんは、ここに十七人かな。うちは春先より秋から冬にかけて調子を崩す人が多い。今三、四人来ることができていないかな。精神障害のメンバーさんは、その時その時の調子の良し悪しがあるし・・。ここでドリップコーヒーがおいしく入れられるようなると、すぐに一般就労してしまう子もおったりして、まあいろいろだわ。ただこれからここをどうするか、と考えたとき『働く場所が地域にほしい』というメンバーさんの言葉が私を今の形にさせたように思うわ・・」
 そう語る竹内さんの横顔に、精神障害者の就労を取り巻く「現在」が映し出されているようでした。お店の二枚のチラシには「三周年記念セール、プレミアムグルメコーヒーセット30%OFF、コスモス二〇〇六年冬のギフト」とあります。販売戦略から経営まで、精神保健福祉とは別の試され方が要求されます。障害者自立支援法が、今年の十月一日から完全施行され「施設収容から在宅支援に」「ケアーのウエイトを就労へのウエイトに」そんなキャッチフレーズが叫ばれる中、その最前線を感じさせていただきました。(杉)


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