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徳島新聞「ぞめき」原稿   杉浦良
No.62 タイトル「リニューアル」

 送られてきた郵便物の中に「障がい者福祉の近未来・・障害者自立支援法と日本のノーマライゼーション・・」と書かれた小冊子を見つけました。旧厚生省障害福祉課長から宮城県知事となり三期を限度と勇退した、慶大総合政策学部教授の浅野史郎氏ほか二人の鼎談(ていだん)でした。二〇〇四年二月に「みやぎ知的障害施設解体宣言」出した浅野氏が、ノーマライゼーションと今度の障害者自立支援法をどう考えるか?私の大きな関心事でした。
 「かわいそうな障がい者に何かいいことをやってあげようといった視点ではなく、障がい者の自立を支援する、それを法律の名前にもあげたことは、財政抑制が見え隠れし、問題もあるが、基本的には評価する。先進国の中で分離教育を前提としているのは日本だけ。地域の学校を障がいが重い人でも受け入れられる環境にし、ごく一握りの障がい者だけが華々しく就労するのではなく、中間層の人々も就労できるようになれば、社会的認知も大いに進む。家の近所に障がい者がたくさん住むようになって、最初は嫌悪感や反発が出るだろうが、そうした反発を経て、マイナス障がい者、マイナス変わり者といったとらえ方が変わり、雑居化してくることで、地域が生まれ変わる。人間が生きていくことは、そういうことだ。その意味で非専門家(福祉に知識のない、一般的な人)を巻き込み、地域全体が変わっていくような取り組みが重要だ」
 浅野氏の言葉に忠実に、私なりに大雑把にまとめるとこうなります。もう三十年も前に熱く語られた障害者地域福祉論が、このように浅野氏の言葉によってリニューアルされたことに、懐かしさと嬉しさと、そして社会や人々の在り方が変わることの難しさを思わずにはおれません。
 ただカメのごとく遅い歩みであっても、それを浅野氏がこのように語られたことに、未来につながる光を見つけた気がしました。(杉)


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