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徳島新聞「ぞめき」原稿   杉浦良
No.77 タイトル「せっけん洗剤考」

 「テンプラ廃油(廃食用油)をリサイルしましょう」と、徳島市は今年四月から市民に呼びかけています。ごみの減量とリサイクルを推進するために、現在、古紙や空き缶などの金属類、布や瓶類を集団回収した団体に対して、奨励金を交付しています。十九年度からは天ぷら廃油を回収対象にし、一キロあたり十二円(他は今まで通り六円)の助成をしようとするものです。回収された天ぷら廃油は飼料や肥料の原料や、ディーゼルエンジンの燃料として生まれ変わります。今まで可燃ごみとして燃やされていたものが、もう一度よみがえると何か気分がほっとします。
 天ぷら廃油の再利用の定番は今までせっけん作りでした。カセイソーダ(水酸化ナトリウム)とお湯(水)と油を反応させて、寝かせると出来上がりです。水の量が少なければ固形せっけん、多ければプリン石けんになります。本格的には、大きな釜で天ぷら廃油と高濃度のカセイソーダ水を熱して反応させ、鍋の油が全部せっけん(脂肪酸ナトリウム)とグリセリンに変わったところで冷やし、炭酸ソーダと混ぜ合わせて乾燥させ、細かく砕いて粉状にすると粉石けんの出来上がりです(高温たき込み法)。天ぷら廃油から造られたせっけんに、これまた気持ちがほっとしましす。
 新聞紙面をにぎわせた、合成洗剤とせっけんの環境への影響論争は、最近下火になりました。合成洗剤が随分進化してきたことや、熱帯雨林を伐採して栽培されたアブラヤシの油がせっけん作りに使われたこと、粉せっけんの洗濯一回当たりの量が、進化した合成洗剤に比べて多く有機汚濁が大きいことや、下水道や合併浄化槽がかなり普及され、直接生活排水が溝を通って川に流れ込むことも少なくなってきたことなど、さまざまな状況の変化がその原因と思われます。
 あまりにもさまざまな視点から考えなくてはいけない現実は、せっけんと合成洗剤のどちらを使えば良いのか分らなくさせます。適量をきちんと使う(多く入れても汚れは落ちない)、きちんとした下水道や合併浄化槽が完備しているところでは省資源の視点からコンパクト合成洗剤を使い、そうでないところは、魚や川虫などのためにせっけんを使うといった選択が、今は必要なのでしょう。(杉)


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