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徳島新聞「ぞめき」原稿   杉浦良
No.84 タイトル「徳島エコタウン」

 徳島県に住んで四半世紀近くなりますが、まだ徳島県人と胸を張ってはとても言えません。ただ所要で実家に帰り、帰路、車の運転で緊張した私の神経を解きほぐすものは、いつしか吉野川と眉山になりました。明石海峡大橋を通り大鳴門橋を渡ると、そろそろ徳島に帰って来たという感じで、最後に夕日に縁取られた眉山を背景に、蕩蕩と流れる吉野川の姿は「戻ってきた・・。」と独り言を引き出す魔力があります。
 随分昔、徳島を活性化させるキーワードとして「川がきれい」「森林浴も出来る」などと語ると「そんなん当たり前じゃん!そんなことで徳島は売り出せへんよ」としかられました。時が流れ、当たり前のことがとても意味を持つようになりました。
 一月二十五日夜、郷土文化会館で地球温暖化の危機を訴えたドキュメンタリー映画に八百五十人もの方々が集まったと聞くと、時代の移り変わりを肌身に感じるようになりました。
 かつて太陽や風や草木や土や水といった自然素材を最大限利用して、人間の住まい造りは行われました。いつしかそれから離れ、太陽や風を遮断し高気密高断熱の建物にエアコンを付けて、効率的に冷房と暖房をするやり方が主流になりました。
大都市の狭い土地でプライバシーを確保し生活するためには、それなりに意味を持ちます。しかし地方都市はそれをまねすることより、自然素材を最大限活かし、エアコンにあまり頼らず、CO2削減効果が高くて、建設コストも安い、エコハウスを造ることで、東京や大阪とは大きく違う街造りが出来ないものかと思います。
 瀬戸内気候に属す徳島市の日照時間は全国第八位、徳島県の森林面積は全体の七十五、六%で、徳島市内には大小百三十八の川が流れています。日照時間の長さは太陽光や太陽熱の利用に最適で、森林面積の多さは間伐材利用の特典もあります。川からの風を利用したり、打ち水や、ゴーヤーを窓際に植えて緑のカーテンを作ったりすることで、徳島らしいエコタウンが完成すれば最高です。
冷やし過ぎず、暖め過ぎない、それなりに心地よい暮らし方をいったん経験すれば、徳島に戻ってきて良かった、徳島から離れたくないという人たちが増え、八 十万人を割った人口も回復するのではと勝手に考えています。(杉)


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