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徳島新聞「ぞめき」原稿   杉浦良
No.96 タイトル「夏の機関紙から」

 毎日いろいろな団体の機関紙が送られてきます。全部目を通す時間と気力が見つけ難い、うだるような暑さの今日このごろです。ただ斜め読みならぬ直角読みしながら、ふと目に留まった言葉がありました。
 「人間は、集団でこそ生き延びられる動物である」。動物行動学者の日高敏隆(ひだかとしたか)氏が日本NPOセンターの機関紙で語った言葉です。この言葉に触発されて辺りの文字を拾っていくと、両親とも本を読む人じゃなかったので、子供のころ家には本というものがなかったとか、親からはほとんどほめられたことがなく怒られてばかりで、親子は信じあってもいないし、先生からもいじめられてばかりいたとか、随分ショッキングな言葉に行き当たりました。
 動物は子どもを教育しようとしていないし、教育しているのは人間だけで、教育すべきかどうかという疑問を抱いていると言われます。しかし日高さんと言えば京都大学名誉教授で、確か滋賀県立大学の学長をされていたのでは・・と思い直して続けて読むと、自称大したことない学長は「学生を育てません。学生が自分で育つ大学です」とキャッチフレーズを作って、新設大学を売り込みました。そして、日高さんの人生観もあるのでしょう「育つものは育つんだ。こうしたらいい子に育つとか考えないほうがいい。こうするとこういう子ができる、っていう発想がいかんのだ。」と喝破されました。
 「世の中にはいろんな動物がいて、それぞれがそれぞれのロジックで生きている。どれが正しいか正しくないか、高級か、進化しているか、ということを考えないのが動物行動学。人間は集団でこそ生き延びられる動物であり、集団を維持するための個体間関係を育む動物だと思っている。」そう自分の立脚点を語られます。その視点から、しつけや子育てを両親二人だけでやらせようとしたり、教育効果を上げるために、同年齢同学力の子どもを集めて行う事自体の誤謬を指摘されます。これってまさに、地域子育て論だし、統合教育、インクルージョン論ではないのか?と一人興奮する私がありました。
 「暑くともページを繰ろう夏の機関紙」(杉)


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