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徳島新聞「ぞめき」原稿   杉浦良
No.100 タイトル「続防火対策」

  前回、この欄に「防火対策」と題して書いたその一週間後、大阪・難波の個室ビデオ店放火殺人事件が起きました。十五人もの命が失われ、十人の方々が負傷された、実に痛ましい出来事です。この個室ビデオ店は自動火災報知器や消火器は付いていたものの、ほぼ全員が寝ている深夜の火事で、広さ二、三平方メートルの三十二室ある密閉された個室には、燃えやすいポリウレタン製ソファや、黒煙が出やすい接着剤で張られた壁紙もあり、二つの窓はふさがれて排煙が不十分で、従業員の初期消火や避難誘導もなされていなかったと、新聞に書かれていました。
 もしスプリンクラーが付いていれば十五人の命は救われたかもしれません。室崎益輝(むろさきよしてる)関西学院大教授は、自動的に水が出て、寝ていても消火できるスプリンクラーは、防火対策の中で一番有効で、特別な施設だけでなく一般住宅にも必要だと、推奨されています。
 今回のような、ビデオを個室で鑑賞するとしながらも、インターネットカフェと同じように、安宿として利用される側面が強い店には、十分な防火対策が必要でしょう。ただ従業員の初期消火、避難誘導、排煙の確保、燃えにくく煙も出にくい建築資材や備品の使用の徹底が、まずは必要条件でしょう。私はスプリンクラー設置という、効果も高いが設置費用も非常に高額な対策の前に、やるべき事があるように思います。たとえば各部屋に、熱で消化液が飛び散る自動消火器の設置などは、圧倒的にコストパフォーマンスが高く設置費用のハードルが低い分、普及率の高さが確保でき、最終的には火災のリスク管理を充実させていくはずです。
 一般住宅にはこのような消火器や粉末ABC消火器、住宅用煙感知式及び熱感知式火災報知器、安全センサー付ガスコンロの使用などを組み合わせて設置することで、費用対効果も高く、一般庶民の目線感覚にあった、防火対策が採れるのではと考えます。(杉)


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