投稿日:2023年03月02日

事務局通信~コスパとタイパ


大学生のAさんがボランティアに来て下さいました。新型コロナ禍の影響で、学生さんのボランティアや研修もほとんどなくなってしまった中で、2年ぶりの参加に、メンバーさんも楽しみにしていました。
新館で作業をするメンバーのBさんもその一人。早速Aさんにまとわりついてあれこれ話しかけてアプローチするのですが、あまりのしつこさにAさんも疲れてしまった様子でした。
知的ハンディを持つメンバーのBさん。最初はまったく作業が手につかず、作業を始めても、3分もたずに作業をやめ、持ち場を離れてしまう日々が続いていました。
気になること、不安に思っていること、腹を立てていること、してほしいこと、やりたくないこと、そういった気持ちを自分の言葉で伝えることが苦手で、朝からイライラした様子で通所して感情を爆発させたり、相手が怒ることや傷つくことをわざと言って反応を見たり、気を引こうとして嫌がることをやったり、物に当たったり、途中で帰ったり、ということも日常茶飯事でした。
通所するようになって15年が過ぎ、少しずつ自分の気持ちを伝えられるようになってきて、作業も15分は持続するようになってきました。
それでも、作業を頼まないと「何や、ほったらかしかい…」とつぶやき、作業をお願いすると「何でワシがやらんといかんのじゃ。お前がせいや」と乱暴な言葉とは裏腹に、案外丁寧にやってくれる。真面目な人ほど表面的な言葉に引っかかって、訳が分からなくなってしまうかもしれません。
最近は「コスパ」(コストパフォーマンス、費用対効果)に加えて、「タイパ」(タイムパフォーマンス、時間対効果)を重視する方も増えてきているようです。
Bさんのような方とお付き合いしていくという営みは、「コスパ」や「タイパ」という尺度で考えると、割に合わないことでしょう。
ネットで検索しても正解はない、努力しても報われるとは限らない、うまくいくかどうかも分からない、そんな海の物とも山の物ともつかないことに人生の貴重な時間を費やすことは、ためらうのが普通です。
「人を育てる」という営みが、割に合わないから、と放棄されてしまう時代が、刻々と近づいているように思えてきます。(小山)。(当会の日々日常をつなぎ合わせたイメージです)




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