(1)生ゴミの処理
生ゴミはニワトリが食べるもの(葉菜類、雑穀、瓜など)と食べないものとに分別します(2種類の生ゴミ用バケツがありますので分けて入れます)。バケツが一杯になったら、ニワトリが食べるものは鶏小屋へ、食べないものはコンポストBOXへと持って行きます。
ニワトリは生ゴミの他、飼料に米ぬか、かきがらを混ぜたものや、草刈りで刈った草などを食べて成長します。ニワトリが産んでくれた卵は共同生活棟の食卓に上ります。
コンポストBOXは3基ありますが、端から順番に入れて行きます。生ゴミを入れていき満杯になったら隣のBOXに入れていきます。それも一杯になったら、もう一つ隣のBOXへ入れます。それが満杯になる頃には最初に入れたBOXの中は生ゴミがかなり減っています。
生ゴミは約90%が水分であり、バクテリアの分解によって水分は地中に浸透していくため、これだけでももとの大きさの約10分の1になります。残りの10%も大部分はバクテリアによって分解され、最終的にはカルシウム、マグネシウム、鉄、リンなどの無機化合物と一部の有機物がごくわずかに残るだけとなります。はたから見ると生ゴミが自然に消えてしまったように見えます。
ただし生ゴミの量が多すぎる場合はバクテリアの処理能力を超え、両方とも満杯になってしまうこともあります。生ゴミをなるべく出さないようにすることが大切だと思います。
(2)ふん尿の処理
ふん尿はコップ1杯分の水で流れ、好気性バクテリアで分解されます。処理用のタンクは2連になっており、それぞれブロアーで空気を送り込んでいます。第一タンクで分解された上澄みが第二タンクに流れ、そこでさらに分解したものを汚水ポンプでくみ取り畑にまきます。この段階になる頃にはふん尿は泥水のようになっていて、悪臭もありません。各タンクにはヤクルトの容器の底をくり抜いたものを入れてあり、バクテリアの繁殖を助けています。
ただしバクテリアの処理能力を越える大量の糞尿が一度に流入した場合、分解速度が追いつかず、分解がやや不十分となり悪臭が漂うこともあります。
(3)生活排水の処理
台所、風呂、洗濯などで出る生活排水は排水池に集められます。
池底には小石、木炭、砂、粘土が層になって敷きつめられており、ここでろ過されて地中に浸透していきます。
最後に
かつては循環していた
かつて私達は大地から受けた恵みを大切に使い、ごみや糞尿(ふんにょう)を再び大地に返すことで循環させていました。畑で収穫した野菜や鶏が産んだ卵を人間が食べ、生ゴミは鶏や犬等に与えたり、畑に埋めたりし、糞尿は畑にまき、それが肥料となってまた作物が実る、というようにつながっていました。
このような生活では、自分の食べている物がどこから来て、自分が排出した物がどこへ行くのか、ということがはっきりと分かります。トマトやキュウリがいつ頃取れるのか、生ゴミはどうやって処理されているのか、肉はどうやったら食べられるのか、ということを子供たちは実体験によって学び、生きた知恵を身につけて行きます。
都市化の進展に伴い、畑が少ない大都市ではこの「循環」が見えにくくなってきました。それでも都市住民の糞尿を集めて近郊農家へ肥料として売る人が存在するなど、循環そのものは保たれていました。
高度成長によって断たれる
ところが第二次大戦後の高度経済成長を経た今、この「循環」は断ち切られつつあります。化学肥料が普及したことで、生ゴミや糞尿は肥料としての役割を失い始め、都市では生ゴミを焼却し、糞尿は処理場で分解して川や海に捨てるようになりました。また生活様式が「より便利で快適な」方向に変化していく中で、プラスチック、ビニール、ウレタンといった自然界で分解されにくいものがゴミとして出てくるようになりました。
限りある資源が大量に消費され、ゴミがどんどん増える「使い捨て社会」へと変わっていく中で、私達の生活は自然界からのしっぺ返しを、少しずつ確実に受けています。
例えば、大都市では「水を買う」という、40年前なら考えられないことが今や当然のこととしてなされています。都市人口の増加により、し尿や生活排水の量が増えると同時に、合成洗剤の使用、田畑での農薬の使用が広まったことで河川の水質が悪化しました。
自主管理で支える「循環」
太陽と緑の会月の宮共同生活棟における『自然循環システム』は先人の知恵を現代風にアレンジしたものです。一度は「厄介なもの」とされた生ゴミや糞尿を手間ひまかけることによって肥料として活かしていきます。私達は決して専門家ではありませんが、自分で勉強したり、色々な人の助けを借りながら、試行錯誤を続けていく中で現在の形に至っています。今の形が絶対である訳ではなく、一つの問題提起となれば幸いと思っています。
『自然循環システム』を導入した生活は都会の便利な生活とは違い、基本的に何でも自分達でする必要があります。例えばし尿の処理の場合、トイレが済んで水を流したらおしまいとはならず、自分達で定期的にくみ取らねばなりません。ゴミ処理にしても、自分達できちんと分別した上で処理する必要があります。草刈りなどの畑の手入れやニワトリの世話などやることは山ほどあり、環境にやさしい、ということは、ある意味では面倒くさいのです。
月の宮共同生活棟では現在様々なハンディーを持ったメンバー4人とアルバイト2人、計6人が共同生活をしており、6人がそれぞれの能力に応じて仕事を分担しています。
「スタッフ、ボランティアがメンバーの面倒を見る」という一方的な関係ではなく、「障害のあるなしに関わらず、自分のできることは自分でやる」という自主管理の共同生活によって、月の宮の『自然循環システム』は支えられています。
ソーラーシステム
Ⅰ 太陽光発電システム
平成10年3月、太陽と緑の会リサイクル作業所で太陽光発電システムがスタートしました。太陽電池容量1.08kw、8枚パネル、設置費用は約140万円で、鳴門教育大学助教授の宮下先生のご推薦を頂き(財)イオングループ環境財団から100万円の助成を受け、残り約40万円を自己負担しました。さらに、平成12年9月、28枚パネルを増設し、5.14kw、36枚パネルのシステムになりました。
このシステムは平成17年2月27日未明に発生した火災により損傷を受け、使用不能となりましたが、平成18年1月11日、京セラ様の特別なご配慮で10年間保証の適用により、同規模のもの(5.5kw
36枚パネル)を無償で設置することができました。
さらに平成19年3月に5.76Kw、同20年3月に5.06kwを増設し、16.02kw、96枚パネルの太陽光発電システムとなり、現在、事務局建物における電気使用量は100%太陽光で自給しています。
また月の宮共同生活棟においても、平成19年12月、同20年2月と2回に分けて計6.48kwの太陽光発電システムを設置、同生活棟での電気使用量はすべて太陽光で賄っています。
Ⅱ 太陽熱温水器
太陽と緑の会事務局建物では太陽熱温水器が設置してあり、風呂、炊事等に活用しています。
太陽と緑の会月の宮共同生活棟では、平成13年度体験ボランティア事業開催時に太陽熱温水器を設置しました。自然循環システムの一環として、風呂場及び炊事場で温水が出るようになっており、共同生活で実際に使用しています。