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 一九九〇(平成二)年の九月一日から十日まで、北は宮城県から南は山口県までの十六歳から二十八歳までの男女十七人で始まったワークキャンプも、九十八年八月二十二日から九月四日まで行われた昨年で、九回目を数えることになりました。
 十年ひと昔−。三年でひと昔といわれる最近の移り変わりの早さを思うと、この十年余りの世の中の変動ぶりと、ワークキャンプに参加した若者たちの感想には、ハッとさせられるものがあります。ワークキャンプに参加した彼らが、原稿用紙に残していってくれた言葉を拾いつつ振り返ってみました。
 「僕がワークキャンプに参加した理由は、今まで経験できなかった福祉や弱者の痛みを知り、その中で自分をどこまで試すことができるかと思ったからである・・・この十日間では、感じることができなかったと思う」(90年、男性、大学生)
 「リサイクル活動は、ばく大な時間をかけてやる地道な作業である。私の目には、はっきり言ってしまえば割に合わないと映った。しかし、ここで働いているスタッフや障害者のメンバーは、割に合わないなんてことを全く考えていないと思えるくらい一生懸命働いている。何が彼らをそうさせているのか、私はとても不思議であった。この十日間、スタッフやメンバーの皆さんと働き、生活し、語り合うことによって分かったような気がした」(93年、男性、大学院生)
 「自分が持っていた問題意識など、どうでも良くなってしまった。ただ、そこでの生活、活動の雰囲気に浸り、、一所懸命働き、おなかがすいてご飯を食べ、疲れて眠たくなって眠る。それがとても大切で、私が求めていたことだと思った。簡単に思える『働き、食べ、眠る』ということを気持ちよくやることが、実はとても難しくなっている。なぜ、こんなに生きにくい世の中になってしまったのか。不思議と思うが、憤りを感じるといった方が本当だろう。人の幸福を願って発展してきたはずなのに、とてもちぐはぐな社会になってしまった。もっと生き生きした社会を取り戻したい」(97年、女性、研究生)
 「ボランティアを始めたきっかけは、自己利益のためだった。高校、大学受験の内申書の点数稼ぎが問題になっていて、私もその一人で・・・しかし、そういう偽善的な心を見透かされたくなかったのと、良心が痛んだのとで、周りの人に話すことはあまりなかった。不純な動機で始めた私が、今もボランティアを続けている理由はなんだろう」(98年、女性、専門学校生)
 「悩みがあってここにきたわけじゃないです、と答えると不思議な顔をされた。ここに来るような会社員は、大抵『行き詰まり』や『悩み』といったものを抱えてやってくるらしい。自分の将来の進路は、おやじの後を継いで小さな会社を経営することと決めている・・・ここに来て、自分が一生懸命磨いた自転車が買われてゆくのを見て、モノを売る喜びを感じた。自分の会社は製造業であるのに、このような喜びは一度も感じたことがなかった。太陽と緑の会は『人も物も大切にしよう』という理念が根づいており、徹底している。損をしてもその理念は守っている。当たり前だが、会社では効率優先で仕事をする。私も目をつり上げて、ピリピリしながら仕事をしている。ここでは手の遅いメンバーがいても許容されるし、笑いがいつも絶えない」(98年、男性、会社員)
 「障害者に対する見方が変わりました。ここに来る前は何かが違うと思っていましたが、一緒に生活してみてとても楽しく、障害を持っていることを忘れるくらいで・・・」(98年、女性、高校生)
 いろいろな悩みと、いろいろな思いと、いろいろな出会いと、いろいろなドラマが、この徳島で繰り広げられました。最年少は幼稚園児、最高齢は五十二歳のアメリカ女性で、延べ二百人もの老若男女が暑い徳島の夏を体験していきました。
(徳島市入田町月の宮)
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