徳島新聞「ぞめき」原稿 杉浦良
No.10 タイトル「ボランティア三六五」
東京の代々木にあるオリンピック記念青少年総合センターに日本青年奉仕協会があります。青年海外協力隊の国内版として、国内の様々な分野の活動に取り組む団体に「ボランティア三六五」と称して、一年間フルタイムのボランティアをコーディネートしています。
毎年五、六十人の青年(十八歳から三十歳まで)が今年で二十六年間、北は北海道から南は沖縄まで、自分の生まれ育った場所とは違う地域でのボランティア活動を続けてきたことは、意外と知られていません。最近は学校教育でもボランティア活動が推奨されるようになり、垣根は低くなりましたが、当初はなかなか理解されにくいプログラムでした。
一般的によく言われたのが「自分の事がちゃんとできた人が、余力で人のために尽くすことで、自分のことすらきちんとできない人がやることではない・・」とか「他人の庭の草取りをするくらいなら、自分の庭の伸びた草をきちんと取るのが先ではないか・・」という指摘です。
これは私自身三十年以上前から、自分の両親からも言われてきた事ですが、「ボランティア活動」というと「奉仕活動」とか「慰問活動」という言葉がピッタリする時にはこの指摘が幅をきかせます。しかし「自己発見」「自分探し」「自己実現」といった言葉が似合うときには「自分の事がきちんと出来ないからこそ・・」「自分の庭の草は取りにくいから・・」といった青年にはうってつけのプログラムとなります。
両親や家族と離れて、生まれ育った場所とは違う地域で、日本国内ではちょっと変わった面白い取り組みをしている団体で、いろいろな活動にとりあえず一年間だけ関わってみることは、自分の足で自分なりの立ち方ができにくい、今の日本の青年たちへの自立支援プログラムとしても機能しているわけです。
「情けは人のためならず」を「自分を見つめなおし、自分を磨くためには、自分がしっかりする前に、とりあえず他人の庭の草を取り続けることが必要だ。」と珍解釈できないものでしょうか。(杉)
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