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徳島新聞「ぞめき」原稿   杉浦良
No.99 タイトル「防火対策」

 六月二日午前二時過ぎ、放火により、神奈川県の木造二階建て約三百二十平方メートルの知的障害者グループホームが全焼しました。三人の尊い命が、この火事によって失われました。また一昨年初め、長崎の認知症高齢者グループホーム火災で、七人が亡くなりました。
 本当に痛ましい出来事で、その対策の一つとして、来年四月から自動火災報知器やスプリンクラーの設置基準が厳しくなります。建物の広さが一五〇平方メートル以上に義務付けられていた消火器、三〇〇平方メートル以上に義務付けられていた自動火災報知器、そして五〇〇平方メートル以上に義務付けられていた火災通報装置は全ての建物に、一〇〇〇平方メートル以上に義務付けられていたスプリンクラーは二七五平方メートル以上になるというものです。
 神奈川県の七人が暮らしていたグループホームは、今度の改正でスプリンクラーなど、全ての防火対策をとらなければいけないことになります。安全対策にぬかりがあってはいけませんし、スプリンクラーがあれば寝ていても消火ができます。ただ小規模住宅でも二百万から三百万円もの費用が掛かるといわれています。大規模な入所施設や病院から、地域社会で暮らすための場所として位置づけられるのが、グループホームです。大規模な施設では当たり前の設備ですから、小規模のグループホームでも導入する意義は分ります。また安全にお金を惜しむことは、命に対する冒涜でしょう。
 しかし、今の日本でスプリンクラーが付いている一般住宅を、私は知りません。お年寄りの一人暮らしや、在宅の障害者にとっても防火対策は必要です。ただ設置工事も大規模で、耐震対策を上回るほどの費用負担は、地域で暮らせる場所を制限することにもなります。できればなるべくお金が掛からず、設置も簡単で、維持管理コストが安い防火対策を導入することはできないのでしょうか?
 寝室と廊下の天井に設置が義務付けられた、電池式火災警報器は一つが五、六千円です。自分で取り付ければ、四寝室一廊下の五人家族は、三万円で防火安全対策が可能となります。施設から地域で暮らせる可能性のハードルが、この防火対策により高くなってしまわないことを願います。(杉)


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