投稿日:2019年04月08日

事務局通信126~おいでおいで

県内のある精神科の病院には本院とは別の場所に外来専用のクリニックがあります。Aさんはそのクリニックに月1回通院し、主治医の先生の診察を受け、服薬するお薬を受け取っています。
ある日、Aさんがポツリと話し始めました。
「本院にはえっと(ずっと)行っていない。○○(クリニックの名前)の方がいい。もう本院には行きたくない。引き込まれそうになる。」
かつて、本院に行くと入院中の当事者の方から声をかけられることがしばしばあって「それもしんどかった…」と。

今から10年ほど前、別のメンバーさんがその本院に入院し、閉鎖病棟に入っていた時に、面会に行かせて頂いたことがあります。
病棟の入り口前のベンチに3人ほど当事者の方が座っておられて、入って行こうとする私をジッと凝視されていた光景を思い出します。
「せこい(しんどい)思いして働いても大して金にならへんやろ?」
「世間は厳しい。ワシらの苦しみなど誰も分かってくれへんわ」
「無理して頑張らんでもええやんか」
退院して作業所に通うようになり、何とか再入院せずに地域での営みを続けていく後姿を呼び止める声。

「保護室は嫌だった。カメラがあって…便器の横で食事なんて…全部捨てた…」
「でも入院して良かった。入院してなかったら死んでいたかもしれない。他の患者さんも看護婦さんも皆優しくしてくれた。でも、もう入院はしたくない。戻りたくない。」
当事者にしか語れないもの。「分かる」などと軽々しく言うことを許さない 凛とした空気が、そこにはありました。
(文責:小山)

※Aさん入院当時と比べ、精神科医療を取り巻く状況は大きく変わったことも付記しておきます。

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