一dトラックいっぱいの段ボールを古紙業者に搬入した帰り、ワーカーの吉田太郎(19)はスタッフの小山隆太郎(29)=名西郡石井町石井=に、いくらになったのか尋ねた。「段ボールと新聞は一キロ一円。三百十キロだから三百十円だよ」。[うそー」。思わず大声を上げた。
炎天下、積み込みにはメンバーと二人で昼までかかった。三百十円では、トラックの油代など必要経費をねん出するのも苦しい。まして人件費となると・・・。

 ◆だれもができる


もっと効率を上げる必要があるのではないかと、ワーカーたちは質問した。「太陽と緑の会リサイクル」代表の杉浦良(46)が答える。「収益だけを追求するなら、もうからない部門をそぎ落としていけばいい。でもここは会社ではなく作業所。障害のあるメンバーが力をつけることが一番大切なんだ」
「太陽と緑の会リサイクル」が、売れ筋の商品だけをならべるリサイクルショップになったとしよう。確かに売り上げは伸びるかもしれないが、作業内容は複雑になりメンバーの入る余地が少なくなってくる。雑用だけをするなら現在働いている二十三人もいらず、多くの人がここを離れなければいけなくなる。
作業所には知的傷害、精神障害、心体障害と、さまざまなハンディを持つメンバーが集まっている。「仕事の種類が多く、手間と暇をかける今のやり方なら、だれもが、何かやれる作業を見つけられる」。杉浦らは十五年の経験からそう考えている。
ただ、運営費の八割以上を再生品販売に頼る同会にとっては、売り上げも伸ばさなければいけないというジレンマを抱えている。徳島県内の小規模作業所で働く障害のある人たちの給料は、月額一万円を超せばよい方。時給に置き換えれば限りなく百円に近い。

 ◆一般との隔たり

これに比べると同会の報酬は群を抜くが、スタッフの給料にしても一般の相場とは相当な隔たりがある。社会保険や厚生年金も三年前にようやく導入できたばかりだ。
「発足当初のように、明日の心配することはなくなったが、今も仕事はきつく、低賃金。他の作業所も含め、有能なスタッフが定着し難い劣悪な労働条件を改善しない限り、いつになっても福祉の向上は望めない」と杉浦。
「壊れた二つの製品を合わせて、一つの再生品ができあがったときの喜びは格別。簡単に物を捨てる社会への反発心もある。人間には自分が生かされ、自信や誇りをもてる可能性がある場所が必要だが、徳島県内の障害者にとってはあまりに少ない」。ワーカーたちは押し黙ったまま聞いていた。
県の実態調査では、一九九七(平成九)年度、県内で排出された一般廃棄物は二十九万三千七百二トン(自家処理を含む)で、処理経費は百五十九億八千四百四万円(施設整備込み)。一トンのゴミを処分するのに五万七千七百五十二円かかっている。仮に売り上げがなかったとしても同会の事業は、社会的には一dあたり六万円近い"収益"を上げていることになる。(敬称略)
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