「あんなに厳しくメンバーにあたるなんて、ただもうショックで」。夜のミーティングで、ワーカーの石崎朋美(25)が切り出した。「オレなんかサボってばかりなのに」と北村慎一(20)も言う。
状況を再現すればこうなる。不用品回収から「太陽と緑の会リサイクル」国府作業所(徳島市国府町南岩延)にトラックが帰ってきた。いつもなら「ソガちゃん」は駆け寄ってきて荷降ろしを手伝う。が、この日はワーカーたちといっしょの回収品の仕分け作業が楽しかった。荷台から家具が運び出されているのが分かっていても、知らんぷり。そこで、スタッフの小山隆太朗(29)が駆け寄ってきて怒鳴った。

 ◆容赦なくしかる


小山に聞くと、「言葉がきついから誤解されちゃうんだけどなあ。やらなければならないと知りながら、ソガちゃんが動こうとしないので『そんなんじゃ、だめじゃないか』と注意したんです」。居合わせた人によると「だめじゃないか」どころのけんまくではなかったらしいが、ワーカー滞在中もスタッフは、やらなければならない仕事を怠けたメンバーを容赦なくしかった。
作業所では、できないことまで、やれとは言われない。毎週スタッフミーティングが開かれ、メンバーの力にあわせたメニューが練られる。日常の作業を通じて、徐々に自立する力を育てているが、できるのに、やらないことに対しては厳しい。
「ソガちゃん」は二十八歳。養護学校卒業後、すぐ同会に入った。最初は一言もしゃべれなかったが、作業や登山訓練を重ね、入会して数年後に言葉を取り戻した。ポップスが好き。とりわけユーミンやチェッカーズがお気に入りだ。キャンプ中、何度もワーカーたちと笑顔で歌った。

 ◆人付き合い苦手

メンバーとなり九年。まだ若いが、今では頼りにされている。そんな「ソガちゃん」だからこそ、小山も思いっきりしかれる。小山の名誉のために付け加えておくと、風貌(ぼう)は理知的で、物静か。決して辺り構わず怒鳴り散らすタイプではない。五年前はワーカーの一人だった。メンバーによると、スタッフの中にはもっと怖い人がいるとか。
石崎は人好き会いが得意な方ではない。他のワーカーともなかなか打ち解けられず、自分の殻を取り払えなかった。彼女はワークキャンプの中日に行われた全体ミーティングで、印象に残った出来事としてこの日のことを挙げた。
「楽しいだけの付き合いなら簡単。友人とも問題が起こらないように配慮してきた。怒ったり怒られたりしながらも、関係が崩れない作業所のスタッフとメンバー。こういうのが人間関係なのかなって思う」
翌日、民間会社に勤務した経験があるメンバーの富開豊一(35)が話した。「いくら怒鳴られてもね、普通の会社と違って、作業所では『もう来なくていい』とは言われない。だから、どんな仕事でも頑張れるんだよ」。
(敬称略)
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