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徳島新聞「ぞめき」原稿   杉浦良
No.18 タイトル「心のアフターケア」

 災害に遭って、自分がどのような状況に追い込まれ、どのような形で次に(明日に)つなげていけるのか、といったテーマに遭遇することになりました。二月二十七日未明、障害者地域共同作業所が火事になり、店舗兼作業所兼事務所が全焼しました。消防、警察から連絡を受け、まだ眠気の残る頭をたたきながら、食パン一枚とバナナ一本を片手に現場に駆けつけました。
 無残な姿になった建物を見て気が動転するかと思いきや、感情がむしろフラットになり、鈍磨していくような気がしました。警察署で事情聴取を受け、次に現場検証を行い、電話、電気、ガス、水が使えなくなった現実の中で、水や火の確保にはじまり、仮事務所造り、パソコンや携帯電話の復旧など、これは阪神大震災や新潟県中越地震の極小版だな、と実感しました。
 出火場所の特定にはじまり、失火なのか不審火なのかの捜査も含め、警察や消防の方々の仕事ぶりを、現場に立会人として加わることでつぶさに見ることもできました。
 警察、消防、報道機関、行政関係、そしてさまざまな方々からの問い合わせに、パソコンが全滅し資料が焼けた中で、自分の記憶能力の減退も加わって、頭が誤作動し始めます。うまく説明できないことに自分自身の情けなさがオーバーラップし、徐々にパニックになりはじめる自分があります。
 ここで、普通はたばこを一服、ということですが、たばこをやめて十年がたつ関係上、深呼吸しかありません。こんな状態を5日間も続けると効果が薄れて、また怒りに似たパニックが自分を襲います。
 「僕だったらきっとショックで寝込んでるわ!」「頑張ってね!」「手伝うことはないの!」「ほんの少しだけど復興に使ってね!」と山ほどの温かい言葉に支えられつつ、ホッとして、ヘナヘナして、少し楽になれる自分がありました。
 心のアフターケアというのはこういうものか、と自分を通して学んだ気がしました。


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