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徳島新聞「ぞめき」原稿   杉浦良
No.20 タイトル「景観のポテンシャル」

 若いころには余り気にならなかった景観に、いつ頃なのか気になり始めました。多分それなりに年をとってきた証しなのでしょうが、自分でもびっくりします。特に、まだまだ自然豊かな徳島の川や谷や山に「異物」が捨てられている光景には、思わずにらみつけたくなる気持ちに襲われます。
 風を切るエネルギーあふれたころには、視界に余り入らなかった風景が、減速するのと同時に目に飛び込んできます。あそこにテレビが一台、向こうに洗濯機が一台、壊れたいすとタイヤはここに、というように、わき見運転で事故を起こしそうです。
 捨てられたゴミの量が圧倒的に増えたのか、それとも自分の視野の変化によるものなのか分かりませんが、精神衛生上よいわけはありません。遍路道を歩く方々にとってはなおさらのこと。「歩き疲れてもう駄目と思った一瞬、横で咲く、花一輪に癒されて・・」とどこかで聞いた言葉も色あせます。
 新町川が気の遠くなるような清掃活動でだんだんきれいになり、鮎喰川の河川敷も廃棄物を不法投棄されては回収し、捨てられては拾う美化活動で、美しい景観が少しずつ取り戻されています。この清掃美化活動の中心は、若者ではなく年長者で占められる傾向にあります。これは現在の教育のあり方に問題があるという意見もありますが、私の場合と同様に、景観の自分自身に対するポテンシャルが、年齢とともに上がってくるからではないか、と勝手に解釈しております。
 四月十七日朝九時から午後三時まで「眉山の癒しの道―クリーンアップ合同作戦」が行われます。弁当、お茶、ボランティア保険料など千円の参加費と、長靴と作業着が必要です。事務局〈電話(〇八八)六五三―五二八六〉へ十日までに申し込まれたらいかがでしょうか。
 「齢(よわい)を重ね、動きが鈍くなり、むしろ見えてくるものがある」そんな一日が体験できると思います。当然ながら未来を担う子供たちへの実践教育にも十分なるはずです。


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