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徳島新聞「ぞめき」原稿   杉浦良
No.24 タイトル「取材あれこれ」

 「一つの現場をじっくり見させてもらうとそこから浮かび上がってくるものがある。見る前に頭の中で自分なりのイメージを作り上げ、そこに合った映像を当てはめてはいけない。何げなく撮ったフィルムの中に、素晴らしい本質、発見があるんだ。カメラマンにはここをこんなふうに撮れとは言わない代わりに、ここはいつまでも撮るな、と独り言をいう。最後にフィルムをつなぐか切るかは監督が判断する」。今は亡きドキュメンタリー映画作家の柳澤寿男氏がよく言っておられました。
 最近マスコミ等いろいろな方々からの取材を受けることが多くなりました。(1)現在の状況をお聞かせください。(2)今回のことをどうお考えでしょうか?(3)これから先どうされますか?・・という三段論法でアプローチされきちんと要点をつかれてスマートです。
 取材時間も簡潔で短く、出された記事はレイアウトよろしく、うまくまとめられていて、文句の余地がありません。トレーニングを受け、マニュアルに強く、テストの偏差値が高いという、勝ち組の若者達を連想したりもするのですが、ただ取材を受ける側としては、もうひとつ面白くないというか、わくわくするものがありません。
 あるとき「取材するにあたって、いろいろ見させてもらっていいでしょうか?」という昔懐かしい質問に遭遇しました。「はい。それは結構ですが・・」という会話からの取材です。
 取材陣はいろいろと動き回り、聞き回り、カメラを向けておられました。眼光鋭く、どこかで見たまなざしが私たちに向けられました。どんなふうにまとめあげるのか?カメラを回しても全部は使えないから、何を捨てて何をつなぐのか?こちらも自然と興味津々です。
 そんな懐かしい眼差しがいまだに存在することに感謝し、ブツブツ独り言を言っていると「このやり方はうまくいくと素晴らしいものができますが、失敗すると本当に駄目なんです!きちんと頭の中で組み立てた通り当てはめていくほうが、失敗がないんです」そう語られた取材陣に、さもあらんと妙に納得させられました。


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