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徳島新聞「ぞめき」原稿   杉浦良
No.25 タイトル「ファッションセンス」

 ありがたいことですが、環境省から表彰される機会がありました。皇居前のパレスホテルで小池百合子環境大臣から賞状をいただくのは、右手と右足が同時に出るようなフリーズ状態を招きます。リラックスするために首を振りふり周りを見わたすと、環境省の皆さんが、ノーネクタイ、カッターシャツにズボン姿といういでたちで正面左に座っておられました。
 ちょっと格式という点では妙な感じもしますが、ネクタイが嫌いな私にとっては本当にうれしい限りです。これが今流行の涼しくクールなビジネスマンをもじった「クールビズ」かと、一人納得しておりましたが、少々いつものスーツのように着こなせていない不自然さがつきまといます。
 出席者には環境省から「地球温暖化防止国民運動」として簡便な服装をお願いする旨の文書が添えられておりましたが、そうでない方も結構おられました。スーツにネクタイ姿でないと格式高い授賞式が締まらないのでしょうか、なかなか統一するのは難しいようです。
 室内温度を平均二十六度から二十八度に上げることで、百九十万トンほどの二酸化炭素の排出量を削減できると試算され、冷え性の女性を守るひざ掛けも不必要で一石ニ鳥の施策と思いますが、そのようにならないのが世の不思議です。
 よくよく考えてみれば、正面右に座られた、白のスーツに身を包んだ小池大臣や黄色いジャケットの政務官の格好良さに比べて、どうもクールビズの男性たち(私を含め)は地に足が付いておらず、借りてきた猫状態であったと感じたのは、私一人でしょうか?
 せっかく東京の由緒正しきホテルで大臣表彰を受けるのに、カッコ悪い姿を公衆の面前にさらすのは末代の恥と感じ、あえて、環境省の勧めに逆らう行為に至ったとすれば、それはそれで納得できる理由だったかもしれません。
 いささか大げさですが、ファッションセンスとスタイル両面の成熟度が要求される、厳しい国際社会の到来を予感しました。


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