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経済サロン原稿 杉浦良
「オイコノミコス」

 「働くことは生きること」と題する小冊子が、名古屋の市民フォーラム21・NPOセンターから発行された。
 サブタイトルに「障がい者の自立を実現する先進事例集」とあり、青森、東京、長野、名古屋、徳島、佐賀にある9ヵ所の団体が紹介されている。
 パン屋、喫茶店、お菓子工房、無添加石鹸製造卸販売、地元商店街の宅配事業、リユースリサイクル事業、データ入力加工、事務処理系システム開発、アンケート企画集計分析など、障害者ができるだけ自立して生活できる賃金を支払うための努力と工夫をしている社会福祉法人、NPO法人、株式会社、有限会社、個人事業主にスポットが当っている。
 「売れないなら、売り方を変えればいい」「待ちの販売から攻めの販売へ」「障がい者が届けるパンが持つ価値」「障がい者にこそ接客業が合っている」「福祉を知らない人が福祉に必要」「立地のせいにしてはいけない」「障がい者もここでは労働者」「お客様の声に耳を傾け常に商品開発」「行政からはお金ではなく仕事をもらう」「すき間を埋める商売を考える」―。
 刺激的で含蓄ある言葉が散りばめられ、障害者の就労支援に求められるのは、福祉の専門知識より経営センスだとまとめてる。
営利団体、非営利団体は、利益を目的とするしないの違いはあっても、どちらも組織を運営していくために利益がなくてはやっていけない。就労支援に工夫と努力を注いでいるのはむしろ営利団体で、より試行錯誤や切磋琢磨が求められているからだと、指摘している。障害者の就労支援に、福祉の専門性よりも営利組織の経営マインドが必要だというパラドクスは、硬直した日本の現状と重なる。
 営利企業が利益の追求と同時に、地域社会への貢献や社員の幸せを考えることで、その存在意義を高めていくことと、障害者の就労支援を目指すために経営センスを磨き、試行錯誤を続ける非営利団体の活動が、やがてつながるわけだ。
 「エコノミクスって、ギリシャ語のオイコノミコスから来ているんです。どういう意味かといいますと、共同体のあり方、という意味なんです」。あの竹中平蔵氏の言葉を本で見つけた。(良)

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