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経済サロン原稿 杉浦良
「産直市の経済効果」

 「食農新時代―活路を求めて」と題して、美馬市の産直市が、本紙に紹介されていた。タバコ栽培衰退後、中山間地が生き残る道はあるか。産直市では市民の交流が生きがいになり、売れた農作物が経済的なやりがいにつながっている。産直市激戦区の石井町をはじめ、産直市ブームは全国に波及しているようだ。
 大量生産大量消費の裏返しが産直市にある。耕作面積が狭い、高齢化でバリバリやれない、段々畑で機械化も難しいーなど悪条件ばかりの中山間地に、自分が食べる野菜の余りをおすそ分けすると小遣いに変わるというカラクリが潜んでいる。さらにそれを進化させたシステムが那賀町の障害者地域共同作業所にある。
 毎週木曜日朝、作業所は産直市に変身する。野菜を持ち込み手数料1割を払えば、様々なハンディーを持ったメンバーが販売してくれる。ひとり1カ月平均2、3万になるという。作業所で育てたEM栽培の野菜、少々割れがある格安卵、渋柿ともち米を蒸して作る柿餅や、「はんごろし」と呼ばれるおはぎなど品数も豊富。売れ残った野菜は作業所メンバーの昼食に早変わりする。
 大阪のスーパーの専務が惚れ込み、ショウガやニンニク、梅干や古漬けまで出荷する。育てた方の顔写真、那賀町の風景、作業所の写真などを添え、大阪の二ヶ所のスーパーとレストランで、徳島の山の幸、畑の幸が喜ばれる。
 年に1度は作業所メンバーの研修も兼ね、地域のじいちゃんばあちゃん、そして町議も引き連れて、大阪で現地視察。ついでに障害者労働センターにユズ酢やスダチ酢、ハクサイまで納め、地元作業所の自主製品としてポン酢やキムチに加工される。障害者福祉と地域活性化、老人福祉と人権教育、都市と過疎地の交流事業など、良く見ると経済活動の中身の濃さがうかがえる。
 そこには、細かく人間の活動を区分し、事業項目ごとに追っていくやり方とは違う、ごちゃ混ぜのとことんつなげて生き残るたくましさがある。やりがいと手ごたえと面白さを織り交ぜる手腕もある。厳しいと言われる徳島経済の指針になるのではと、感じている。(良)

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