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No.2 「切れない包丁」   杉浦 良

 「『障害者福祉』なら障害者福祉、『環境保全』なら環境保全、『社会教育』なら社会教育『支援事業』なら支援事業と項目別にちゃんと分けてください!その項目別にそれぞれの事業内容を書くことで、あなた方の活動の中身が判りやすくなるばかりか、整理されて、情報公開しやすくなるわけです。」
 こうアドバイスを受けました。そう言われても、その障害者福祉と環境保全と社会教育と支援事業がつながっているんです。リンクしているところが私達の活動のポイントなんです。例えばスタッフとボランティアとハンディーを持ったメンバーたちが、各家庭から古紙や鉄くず、古着や雑貨、電化製品、家具といったリサイクル及びリユース可能な不用品を回収し、機関誌を渡してお礼を言います。あるものは分別して資源に、あるものは磨いたり選別したり修理したりして、もう一度使っていただきます。お金になるもの、ならないものがある中で、そこから全体の運営費やハンディーを持ったメンバーたちへの給料、支援助成活動費などを捻出しています。この一連の活動の中に先ほどのリンクが隠されています。
 これを年間約三百日、二十年ほど続けると「サークル」「サイクル」「リサイタル」と呼ばれ続けた歴史が幕を閉じ、徳島でとうとう『リサイクル』という念願の言葉が使われるようになりました。
 項目別に、分析的に、論理的整合性という包丁の切れ味は見事なものです。たとえば日本の農業や林業を市場原理という包丁で切れば、一部を除いてほとんどを海外からの輸入で賄い、その代わりに自動車やプラズマディスプレーを売るほうが理にかなっています。ただ別の視点、観点に照らし合わせてみると、農業や林業と共同体、景観、水源、環境、治水、漁業などが相互に繋がっていることが分かります。思いもよらぬこと同士が実はつながっている、リンクしている事があぶり出されます。切れない包丁では、風が吹けば桶屋が儲かるわけです。(杉)


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