新聞連載記事 >ぞめき

徳島新聞「ぞめき」原稿   杉浦良
No.6 タイトル 「松下照美さんの講演」

 十日、十三日の両日、「モヨ・チルドレン・センター」主宰、松下照美さん(徳島市出身)の講演を聞かせていただきました。彼女は十年前にアフリカに渡りましたが、ケニアの首都ナイロビ郊外のティカでの活動拠点となる建物の建設費支援要請と、活動報告会を兼ねたものでした。鉄筋石造り二階建ての建設予算が約一千万円、全国を二ヵ月間かけてキャンペーンし、支援を訴えるというものです。
 ストリートチルドレン対策、スラムの婦人グループ支援、貧困家庭の学費援助など、規模は小さくとも顔の見える活動をされています。「子供達に背中を押されるようにして帰国しました」と語る彼女に、年齢的にも肉体的にも最後の大事業となるだろうという予感に裏打ちされた「ある覚悟」が感じられました。
 「日本でもやることは沢山あるだろうに、なぜアフリカなのか?」と問われ「たまたまウガンダの、そしてケニアの子供たちだったわけです」と答える言葉に、多分そう答えるしかない彼女自身の所在のなさが重なります。「自分を必要としてくれる人(子供)がいるということが、どれだけ素晴らしいことか・・」と語る彼女に、国際貢献、国際協力にありがちな『目線の高低』は感じられません。
 エイズ、貧困、スラムという厳しい状況下では、過酷な現実が日常を包み込みます。悲惨さと底なしの明るさが同居する子供たちに、自分のある覚悟を重ね合わせたい、そうすることで自分の所在のなさを埋め合わせたい、そう願っておられるのでしょう。だからこそウガンダで、そしてケニアでやっていけたのでしょう。
 一緒に来日し、支援を訴える現地役員のジョージ・オワデさんは、一年間に三万四千人も自殺する、豊かでお金持ちの国日本を理解できない、と言われたそうです。あまりにも異なる国々を照らし合わせながら、それぞれが直面する問題がいったいどこにあるのか、それを見せつけられました。それに答えられる可能性を、この日本でのキャンペーン中に探りだせないものか、そうも感じさせられた二日間でした。(杉)


トップページへ戻る