新聞連載記事 >ぞめき

徳島新聞「ぞめき」原稿   杉浦良
No.14 タイトル「スピリット」

 十二月十六日に、徳島県が設置している十の障害者施設について、二施設、三機能の廃止や、残る施設の民営化が検討会で示されました。収支バランスが崩れてしまった現在の日本では、福祉といえども時代に合わせて検討し、消滅するものと新たに創出する事業を峻別(しゅんべつ)する必要があります。
日本では費用対効果という視点を福祉に持ち込むことはタブー視される傾向がありました。私が最初に社会福祉を学んだ本の中に「歴史的には民間社会福祉事業が先に発達した」とあり、公立と民間の社会福祉施設の比較をしていました。
 ▽使命感は=一般的に乏しい(公立)。旺盛である(民間)。以下同様に公立、民間の順▽特色は=設備などに特色があっても特色のある方針はあまりない。ユニークな伝統をもっていたり新しい方針を打ち出す▽自主性は=法規規則に制約され自主性が乏しい。ある程度自主性がある▽ニーズへの対応は=個別ニーズへ適切な処遇不十分。公立施設よりは対応努力に積極的▽アフターケアは=充分でない。やや積極的である▽創意性と試行的努力は=乏しくお役所風である。積極的なところが多い▽広報活動は=消極的。積極的なものもある▽地域社会との協力は=消極的である。施設入所者だけでなく地域のために役立てるよう努力しているものが多い。以上、「社会福祉」(ミネルヴァ書房)からです。
 三十年も前に書かれた本にうなずいてしまう現在があり、ようやく検討され始めた現実があります。
 ただ民営化こそが最善だとする言葉の前に、社会福祉の発展の歴史をひも解いてみると、社会福祉事業は、民間が自主的、任意的、創造的に前進させてきたという事実に直面します。民間の社会福祉施設だからというよりは、「自主的」「創造的」だからこそ、本来の社会福祉のスピリットが磨かれるわけです。
 無理とは知りつつ、来年は、清水寺恒例の言葉の一つに「スピリット」に当たる漢字が挙げられる年であって欲しいものです。


トップページへ戻る