徳島新聞「ぞめき」原稿 杉浦良
No.13 タイトル「今後の障害者福祉」
今年の十月十二日、厚生労働省から社会保障審議会に、今後の障害保健福祉施策について改革のグランドデザインがようやく示されました。
日本における障害者福祉は、敗戦後の昭和二十四年に身体障害者福祉法、昭和三十五年に知的障害者福祉法が施行された後、時代が大きく変わる中で、今まで根本的な改革がなされてきませんでした。(ただ精神保健福祉法は平成七年に施行され、ようやく日本にも、精神障害というカテゴリーが誕生したばかりですが)
今回の改革の基本的視点は①総合的、均一的な施策の確立②自立支援システムの確立③継続的制度の確立という三点が挙げられています。
今まで三つに分かれていた福祉法を障害者福祉サービス法(仮称)に統合し、できるだけ身近なところで必要なサービスを受けながら暮らせる地域づくりを考える、保護の対象から障害者が、就労も含めてその人らしく自立して地域で暮らし、地域社会にも貢献できる仕組みづくりを考える、国民の信頼を得て安定的に運営できるようにより公平で、効率的な制度を考えるというものです。
そのまま読めば本当に素晴らしい改革と言えますが、その裏に今まで時代に合わない制度に振り回されてきた、大きな反省点も隠されています。
現行の細分化された障害者施設に見られる実態と理念の乖離(かいり)、法外施設として存在し続けた約六千カ所の障害者地域共同作業所、取り残された障害者と言われる難病患者、高機能自閉症、アスペルガー症候群などの存在、そして約七万二千人と発表された社会的入院(地域に受け入れられる場所がないので退院できない)を余儀なくされている方々の出現など、山積みされた問題がその改革の裏で横たわっています。
果たしてこの改革で、日本が新たな障害者福祉ビジョンを獲得できるのかはわかりません。ただ継ぎはぎだらけの障害者福祉施策ではもう駄目だ、という危機感が感じられました。
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