徳島新聞「ぞめき」原稿 杉浦良
No.21 タイトル「一石四鳥」
広辞苑によると一石二鳥とは「一つの石を投げて二羽の鳥を殺すこと。一つの行為から同時に二つの利益を得ること。」とあります。飯泉知事がこれをさらに発展させて「一つの石を投げて三羽、四羽の鳥を捕らえることを考えなさい」と県職員にハッパを掛けたのは、最近の話。これをすでに七年も八年も前から実践しているところが、那賀町の旧相生町にある障害者地域共同作業所「あすなろ作業所」です。
身体、知的、精神など様々なハンディーを持ったメンバー達が通い、作業や日中活動を行いながら、成人期の居場所として、厳しい運営費をやりくりしながら、日々活動されています。「地域で生まれた障害者が地域で暮らせるよう、親も町村も住民も考えんといかん」が口癖の所長さんを先頭に、EMボカシ作りや竹細工、たこ 焼きや焼き芋販売、トマトや野菜作りなど、アイデアを出し知恵を絞っておられます。
ただ販路の拡大で壁にぶつかりました。そこで地域のおじいちゃんおばあちゃんに呼びかけて、自家用に栽培している野菜を少しずつ出荷していただき、その一割を手数料としていただき販売するシステムを考案されました。過疎地の町に個人の無人販売所より品数が豊富で、作業所のメンバー達が売り子として声を張り上げ、古着やおもちや飲み物までそろう市場ができるわけです。
「自分とこでは品数がそろわんし、年寄りが自家用に作る野菜は見てくれは悪くても、農薬をかけん。余分に作って畑の肥やしにしていたもんが、小遣いになれば一生懸命になるで。余った野菜は置いていってくれて、これがみんなの昼食に上るんヨ。畑仕事は嫌いだが売るのは好きだというメンバーさんも多くてナ。最近は徳島や阿南からも買いにきてくれるんヨ。この前買ったハクサイ、おいしかったと言われりゃ、年寄りは喜ぶワ」
そう語る所長さんの話に、これこそ過疎地や中山間地の多い徳島ならではのモデル事業では、と感じました。障害者福祉と地域活性化と高齢者対策を三つどもえにして、人権教育まで視野に入っている。これぞ「一石四鳥」です。
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