徳島新聞「ぞめき」原稿 杉浦良
No.36 タイトル「私メッセージ」
徳島市東新町商店街のしんまち劇場七〇七で「街角の精神保健福祉を考える集い」が十二月十日に開かれました。
東京都調布市で「不思議なレストラン」を運営されている松浦幸子さんの記念講演を中心に、四国学院大の富島先生、丸亀市コスモスの家施設長の竹内さん、冨田病院の精神保健福祉士田嶋さんらを交えたシンポジュームなど、多彩な顔ぶれが、それぞれの角度から、精神障害を抱えた方々の社会復帰に向けた取り組みを紹介しました。
精神保健福祉というと、何か特別な取り組みが必要のような感じを受けますが、「心の病気をしたって大丈夫、誰だって人生の途中で心が疲れたり、病気になることがあるはず。休ませてくれる場とそのままのあなたでいいよと受け止めてくれる人と、失敗してもいいよと試してみられるチャンスがあれば・・」と語られる松浦さんからは、難解な専門用語は出てこず、心温まる話と、相手を不快にしない気持ちのいい人間関係のとり方のトレーニングまでありました。
精神科のソーシャルワーカーとして心病む人達の社会復帰を支援しながら、現在に至っている彼女にとって、心の病気の分りにくさを一般の方々に理解してもらうのと同時に、心の病気をした人のそばにいる私たちは、相手を傷つけないメッセージの送り方を練習して欲しいと伝えます。心の病気をするとマイナス的発想になり被害的な考え方になりやすいので「私メッセージ」で不必要な感情的トラブルを防ごう、という発想です。
たとえば毎日帰りの遅い夫に「どうしてあなたは時間にルーズでだらしないの!」と攻撃すれば「仕方ないだろう、付き合いだ!」と反発し、お互い自分の気持ちを伝えた満足感はなくなります。これを彼女は「あなたメッセージ」と呼び、相手への批判や要求のみを伝えるやり方と位置付けます。
反対に「私メッセージ」では、「おかえりなさい、余り遅いので心配していたのよ。」となります。心配していた気持ちをそのまま伝えたら、「ごめん、明日は早く帰るよ」と夫も素直な気持ちになる、というものです。
よくよく考えれば、これほど難解なことを、こんなにさらりと語る松浦さんのすごさをあらためて感じさせてもらいました。
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