徳島新聞「ぞめき」原稿 杉浦良
No.35 タイトル「ウサギとカメ」
先の総選挙で圧倒的な大勝利を収めた自民党の秘訣は何だったのでしょうか?しばらく考えてみましたが、自分の能力の限界なのかなかなかうまくまとまらないので、いつしか忘れてしまいました。
一ヶ月半ほどたって「歴史的勝利は小泉首相の資質がテレビメディアとマッチしたこと」という言葉を新聞記事で見つけ、なるほどと合点がいきました。
私などテレビカメラを向けられると、それでなくとも言いたいことのピントがボケるのに、言葉数が増え、早口になり、時々訳が分らなくなります。多分、一つの文章を選び出すと、この辺りがもう少し違うかもしれないとか、ここも説明しておかなくてはとか、いろいろ実体に即して過不足を言葉で補おうとするからなのでしょう。回りくどくて、途中でえーとかあのーとかが入り、余計にみっともなくなります。
それに比べて小泉首相は、短い時間に、短い言葉で、効果的な意味を込める達人です。その意味ではあこがれの的で、インタビューアの矢継ぎ早の質問に、言葉を連ねず短くサクサクと交わす姿は、本当にカッコイイものです。
これは長年の訓練と努力によって、長い言葉を短くする技を身に付けたのでは、とか、熟考に熟考を重ねて言葉をそぎ落としていった結果だとか、あれこれ考えてみましたが、やはり「天才」なのでしょう。凡人があれこれ努力してもかなわぬことと、妙に納得させられました。
「閉塞感を打ち破るメッセージ」を心待ちにしていた国民に、丁寧かもしれないが長く回りくどい言葉で説明した民主党の岡田前代表は、やはりミスマッチと受け取られたのでしょう。
これからはますます、この才能がもてはやされる傾向になるのでしょう。しかし、振り返ってみれば、テレビカメラを向けられて言語明瞭意味不明だったり、インタビューを受けて両方不明だったりする方もおられた中で、今まで政治はとり行われてきました。報道メディアの種類によって醸し出されるイメージは大きく違います。テレビメディアはウサギさん、新聞メディアはカメさんということになるのでしょうか。
「ウサギとカメがいて、この世は成り立つ」と童話に込められた先人たちの知恵は示しています。
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