徳島新聞「ぞめき」原稿 杉浦良
No.49 「脳ミソ活性法」二〇〇六年七月十三日分
七月二日の徳島新聞に、東北大学の川島隆太教授の「新聞の音読が脳を鍛える」と題した講演内容が載っていました。「脳年齢いつまでも若く」と、大きな白抜きの見出しの記事はタイムリーで、少子高齢化にともなう国民の不安を映しだす合わせ鏡のようです。
体の健康のため、健康食品をとりウォーキングを欠かせない方々も、脳ミソまで若くする方法はなかなか思いつきません。教授によれば、機能的MRIという装置が開発され、脳の働きを科学的に解析することで、いろいろなことが分ってきたということです。
大脳のうち前頭前野というおでこの裏側で物事を考えており、前頭前野こそが人間を人間たらしめている所と言われています。ここが活発に働く営みに「読み書き計算」「コミュニケーション」「料理裁縫、器楽描画、手芸工作」という三本柱を挙げられています。
ほかの動物と人間を区別する大きな違いがこの三つであり、当たり前と言えば当たり前のことを言われているわけです。年を取ってこの三つの事柄がおろそかになってくると、脳ミソがリラックスしすぎて機能しなくなる、しかしいつも働かせていると活性化してボケにくくなる、というわけです。このことはお年寄りだけでなく、子供や若者、立派な大人にも、十分当てはまることです。
まずは、新聞や本を読み、お金や数の計算をして、色々な方々と交渉したり討論したりし、料理や洗濯、裁縫をし、時には楽器を手にして演奏し、時には筆を執り絵でも描いてみる。こんな生活を持続して行っていると、脳ミソはいつも働いて、生き生きとした状態に保たれることになります。こういう環境をそれぞれ一人ひとりに残しておくことこそ、みんなを生かす極意となります。
子供には読み書き算盤、そして親子の会話と、料理の手伝い後片付けけ、落書きノートに絵を書かせ、ギターやオカリナで脳ミソが鍛えられるわけです。
反対にテレビ、ゲーム、漫画といった環境に浸っていると、前頭前野はリラックスしすぎて、そのうち働き方を忘れてしまうことになります。
「致せり尽くせり」から脱却し、子供も大人も、若者もお年寄りも、男性も女性も、そして健常者も障害者も、やれないことは別として、やれることを自分でやれるよう仕向けて行くことが、実は脳ミソを活性化させることだと、川島教授は言っているように感じました。(杉)
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