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徳島新聞「ぞめき」原稿   杉浦良
No.71 タイトル「誰かに使ってもらいたい」

 リユース(再使用)・リサイクル(資源の再利用)活動を、さまざまなハンディを持ったメンバーたちと一緒にする現場に関わらせていただくと、別の世界が見えてきます。
 「おっちゃんが死んだんよ。荷物を整理しているところだから、すぐに取りに来てくれる?」以前再入院される旨の連絡をいただき、それっきりになっていた奥さんからです。おっちゃんは一風変わっていました。故障している電化製品を自分で直して使うから譲って欲しいと言われました。太平洋戦争中、通信兵として従軍し、娘さんに重度のハンディがあることで、神戸から徳島の病院にかかわることになりました。そしてそのまま徳島に引っ越すことになったと聞きました。
 「ハンディを持ったメンバーさんが働いているのを見ていると、なんかそれだけでみんながいとおしく思えるんや」顔見知りになるにつれて、そんな言葉がポツリとこぼれ落ちました。「もしおっちゃんに何かあったときに、使えるものは全部引き取ってくれる?」冗談交じりに言われた奥さんの言葉がよみがえります。神戸の病院で亡くなられ、徳島の住まいにはやせ細りながらも金魚が水槽で泳いでいました。
 「もう一度使えるものは、誰かに使っていただきたい。資源として使えるものは、再度資源として使っていただきたい」詳細は私には分りません。ただ地縁血縁といったつながりの枠組み以外に、何かが、世代や地域を超えて繋がってほしいという思いや願いといったものを感じさせていただきました。
 3R(ごみの減量、再使用、再資源化)とか4R(3Rに環境負荷が高いものは使わないという意味でのリフューズを含める)といった言葉を、地球温暖化対策とワンセットで目にする機会が増えました。今のままでは持続可能な社会として成り立たない、宇宙船地球号は今破滅の道に進み始めた、といった切り口の中で、自分の使っていたものが、もう一度誰かに受け継がれていくことへの意味と願いの重要性を、随分昔の出来事を振り返りながら、再認識しています。(杉)


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