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徳島新聞「ぞめき」原稿   杉浦良
No.85 タイトル「首都東京」

 久しぶりの東京行きでした。東京駅前の再開発計画は知っていましたが、大々的なことに驚きました。赤レンガが際立つ丸の内口東京駅の周りを工事用フェンスが囲い、東京駅の歴史を紹介するさまざまな写真パネルが張られていました。一九一四年、建築家辰野金吾が設計したこの建物の歴史がそこに書かれていました。
 一九四五年五月二十五日、あたり一面を真っ赤に染めた東京大空襲で、駅の屋根と内部を焼失しました。その約二年後に、屋根が丸から角に、駅舎は三階建てから二階建てに設計変更され復旧しました。二〇〇七年五月、駅舎を当時の三階建てにもどす工事がスタートし、現在に至ります。
 二〇〇三年に国の重要文化財に指定されたこの建物ですが、周りを巨大な高層ビル群が取り囲みます。前には丸ビル、新丸ビルが二棟屹立しています。そしてその向こうに異空間として皇居が粛々とたたずんでいました。前日に降った雪が枯れた芝生に静寂を与え、お堀に遊ぶカモたちは望遠カメラを携えたダウンジャケット姿のお年寄りを和ませます。
 一台のはとバスが観光客を積んで皇居前に止まりました。真っ青に晴れ、キーンと冷たい空気に、白い息が絡みます。西にはビル群に囲まれた東京タワーが細い頭を出し、東には何台ものクレーンが建造中のビル群に、カマキリの腕を思わせる姿で立っています。日本語、英語、中国語、韓国語で書かれた案内文が、この東京の「今」を彩ります。
 二月九日、六十年ほど前は廃墟だったこの東京駅前の丸ビルで、ストップ温暖化「一村一品」大作戦全国大会が初めて行われました。全国から応募のあった一〇七四箇所のうち、四十七都道府県の代表が勢ぞろいしました。
 トイレの手洗いから自動的にお湯が出る最新の高層ビルからの、地球温暖化防止取り組み情報発信は、今後の日本の行く末をどうすればよいかという課題を、私たちに突きつけているように感じました。
 帰路、上空からは、暗闇に真っ赤に燃えて輝く東京がありました。日本の環境首都東京とアピールが出来るほど成熟ができるのか?そうあらためて問われている気がしてなりません。(杉)


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