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徳島新聞「ぞめき」原稿   杉浦良
No.90 タイトル「くらげの骨なし」

 最近ひょんなことから、子供が寝る前に布団に入り、本を読み聞かせるようになりました。長いのはこちらも寝てしまうので、文章短くストーリーはすぐに完結するのはないか?と探すうちに「まんが日本昔ばなし」「まんが偉人物語」という、それぞれ六十巻ものを見つけました。古本で買ったため全巻そろってはいません。
 最初は義務的要素が強かったものの、次第に自分もそれなりに面白くなってくるのが不思議です。ひと通り読み終え、次に探すのもめんどくさいのでもう一度読み返すと、それはそれで別の世界が広がってくるのを感じます。「前に読んだよ!」とクレームがつけられないのを良いことに、二回目の読み聞かせが始まりました。
 「くらげの骨なし」は、仲の良かったサルとカメの話です。竜宮に住む竜王の娘の病気を治すために、サルの生き肝が必要になり、カメは親友のサルをだまして竜宮に連れてきます。酔いつぶれたサルは、おしゃべりな門番のカレイとクラゲが事の顛末を話すのを聞いて、芝居を打ちます。肝を木の上に干したまま忘れたとウソをついて、カメに陸まで運ばせ、怒ったサルの投げた石で、カメの甲羅がひび割れます。帰ったカメから話を聞いた竜王は、カレイを真っ二つに切り、クラゲの皮をそいで骨を抜きました。甲羅にひびの入ったカメは二度とサルに振り向いてもらえませんでした。
 勝手にストーリーを縮めるとこんな具合です。カメの甲羅のひびと、骨と皮のないクラゲと、カレイが平ぺったくなったわけを、人間の世界で起きる様々な問題と絡めて説明しています。
 ユング心理学の大家だった河合隼雄氏は「物語と人間の科学」の中で「・・私が専門としている『人間の科学』では何らかの知識を正確に伝えるということだけでなく、聞く人が『それを腑に落ちる』と感じる、つまり身体性を伴う知として把握する必要がある。従って、そこでは『物語る』ということが大切になってくるわけである。・・」と書いています。
 説明は正しいが、腑に落ちないことの多い今日このごろ、子どもに読み聞かせをする意味を考えさせられた、この五月の連休です。(杉)


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