徳島新聞「ぞめき」原稿 杉浦良
No.111 タイトル「二人三脚」
色や質感の違う木片を張り合わせ、阿波踊りをメインテーマに、アートとして表現する作品展に行ってきました。ジグソーパズルのように小さな木をつなぎ、一メートルを越す大型作品を作り続けてきた、丸居哲雄さんの個展(上板町技の館)です。
脊髄性小児麻痺で車いす生活を余儀なくされた彼は、心材に薄い板を張り合わせる杢張(もくはり)の技術を磨き、二十五年ほど前、自宅で仏壇パーツの杢張作業をしていました。車いすで作業ができるように自分で作業場を改造し、籐製の乳母車にわが子を入れての作業でしたが、親会社の倒産で作業を断念することとなりました。
山あり谷ありの人生の中で、続けてきたのが、独学での「寄せ張りアート」です。大型作品を手がける彼にとって、一つの作品を作るのに一年ほどかかります。今回の展示会に出品された二十三枚のアートは、彼の四半世紀の歴史でもあります。
青や白の木片を中心に情熱的に構成された初期の作品から、茶や黒が浮き上がる二度目の県知事賞を受賞した「アザのある人々」まで、年とともに少しずつ変わる作品群に、彼の人生が重なります。そして、阿波踊りの踊り子たちの顔のアザに、熱狂的に踊ることで日々のつらさから解き放たれたいとする人間の内なる衝動を重ねます。一年という歳月をかけて作り上げた途端、分身として一人歩きする作品に、愛着と近親憎悪を抱く彼があるのでしょう。
「へんこつものですから・・」。そう笑いながら語る、奥さんがありました。彼を支えながら、子育てをしながら、そしてプロデュースまでする彼女が「本当に、やりくりが大変でした・・」とこぼします。
それぞれ電動車いすを操り、見学者の応対に動き回る一組の夫婦を見ながら、二人三脚とはこういうことだ、と妙に納得してしまう私がありました。その二人から生きる力をもらったたくさん方々は、三回目の個展を楽しみにされることでしょう。(杉)
|