徳島新聞「ぞめき」原稿 杉浦良
No.112 タイトル「箴言と警句」
新聞をペラペラめくっていると、「『四十兆円の借金』無責任な政治家」という文字が目に入りました。
日本の新規国債が四十兆円を越える現状に、その借金を返すことになる子供の身にもなって欲しいという訴えです。読者の欄にありがちな・・などと、少々軽く飛ばし読みしていると、これを書いたのが仙台の十三歳の中学生だと分りました。そして最後に「今の政治家のような大人にはなりたくない」と、締めくくっています。大人である私は、後ろめたさとともに、十三歳の子供の訴えのストレートさに、未来につながる淡い希望の光を見た気がしました。
事業規模が五十六兆八千億円、国費投入十五兆四千億円の、百年に一度と言われる経済危機対策で、今年は国の税収入より借金が上回る可能性が高くなりました。昔、こんなに借金があるのに、四国に本州連絡橋が何としても三本必要ですか?などと疑問をはさんで、しかられたことを思い出しました。
「あなたはその借金を、自分の目で見たことがあるのですか」と言い返された、四百五十兆円ほどの借金は、今はいつの間にか二倍になりました。
日本にも自己破産はあるのだろうか?などと不謹慎なことを思い浮かべていると、実体経済の三倍半も膨らんだマネー経済が破綻し、金融危機を招いたアメリカの投資銀行の栄枯盛衰が、テレビで放映されていました。目が飛び出るほどの高額報酬に沸いたウォール街と、豊かだった中流層が、気がつけば低所得者層へ飲み込まれるアメリカの現実が交錯します。
本当に百年に一度の大不況を乗り切るための財政政策であるならば、この十三歳の中学生の未来につながる投資であり、子供たちが将来支払うことになっても合点がいくものだけにできないか?と、あらためて読み返す十三歳からの、箴言と警句です。(杉)
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