ワークキャンプ中、若者たちは障害を持つメンバーも交えて夜遅くまで話し合った。福祉関係の映画もあった。講演会もあった。コンサートも開かれた。十日間の平均睡眠時間は五時間に届かない。

 ◆足手まといに・・・


深夜「太陽と緑の会リサイクル」月の宮作業所(徳島市入田町)生活棟の台所に、数人のワーカーが集まって話し込んでいる。「ボランティアって、なんやろね」と一人が聞いた。そういえば、このワークキャンプは「ボランティア活動を通じた学びの場」だった。「何か役に立てることがあるはず」と思って参加したワーカーも少なくない。
実際は、畑仕事でも国府作業所のリサイクル作業でも、スタッフや「何かしてあげられるはず」だったメンバーたちから教えられることの方が多い。何もできない自分に戸惑い、作業の足手まといになってるのでは、と心配するワーカーもいた。「本当にボランティアって何やろう」。言葉を重ねても結論は出ない。
キャンプ七日目。同会の活動に参加して二十年を超す松村公三(46)=香川県香川町、建築関連会社経営=が講演した
。中学時代いじめにあったこと、ちょっとしたきっかけで立場が逆転し、仮面をかぶって生活する知恵を身につけたこと、ボランティアは自分を飾る道具だったこと−などをあからさまに話した。
「ある人と知り合い、仮面が外せた。その人の影響で今もボランティアを続けている。人との出会いは決して偶然ではない。かかわりを大事にすれば、人生に広がりが生まれるのではないか」と、松村はワーカーたちに問い掛けた。

 ◆原野を耕し畑に

牛ふんとおがくずを混ぜた淡茶色の原材料を草とともにたい肥穴に投入し、一年間寝かせると黒褐色の有機肥料になる。牛ふんが良質のたい肥として熟すには十分な時間が必要だ。
月の宮作業所の畑はもともと原野だった。スタッフやメンバーが耕し、ワークキャンプで作った肥料を毎年、ワーカーたちがまき続け、ようやく野菜が育つようになった。今年も引き続き、たい肥を畑に入れ、来年に備えて新たな肥料を仕込んだ。草刈りを済ませ、整地された土地に、軽トラックでたい肥を運ぶ。積むのも降ろすのも手作業。この日も最高気温は三〇度を超えた。メンバーとワーカーたちが掘った穴は、大人一人がすっぽり収まるほどの深さだ。ワーカーの熊倉匡志(22)が「よいしょお」の掛け声とともに、スコップでたい肥をほうり上げる。全身の筋肉が緊張し、弛(し)緩する。軽トラックとはいえ、五、六人がかかっても、すぐにはいっぱいにならない。
たい肥層にスコップを突き刺す。すくう。力を込めて投げる。積み荷を下ろしたトラックが戻ってきた。またスコップを突き刺す。延々と繰り返される単調な作業。「楽しいのか、義務感に駆られてやっているのか分からないけど、とにかく夢中になってしまった」とあるワーカー。
養分を吸い取られて白っぽかった畑が、夕方を待たずに黒々となった。
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