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徳島新聞「ぞめき」原稿   杉浦良
No.69 タイトル「青年長期ボランティア」

 「もうヘロヘロですわ・・」。そう言って草刈り機のエンジンを止め、振り向く麦わら帽子姿の青年がいます。五月二十九日に中鮎喰橋西詰め北側で、一日早い「ゴミゼロの日」の清掃活動を行いました。鳥取出身の彼は「青年長期ボランティアに参加して、ちょっと骨休みしてくるわ・・」と言ってこの四月初めに徳島にやってきました。母親に「ボランティアなんてただだから、馬車馬のようにこき使われるで・・」とくぎを刺されつつも、それはないだろうとたかをくくってやってきましたが、お母さんの言葉がしみじみと心に染み入る今日この頃です。
 「今までボランティアをしたことがありません。・・自分の貴重な時間や体力などを使って・・赤の他人のためにやるなんて、まっぴらごめんだと思っていたからです。・・ただ、今こんなふうに生きていて、行き詰まっています。・・日本にも世界にも将来にも希望が持てなくなりました。・・このまま生きるのはつらいので・・参加しようと思いました。」そんな言葉がポツリポツリとこぼれ落ちました。
 「草刈り機三台で刈ると本当に早いわ!空き缶やらペットボトルやらコンビニやファーストフード店の包装ごみも、ようけ出て来ただろ?あんたのおかげでごみゼロ活動を始めて以来最高に土手の草刈りが進んだわ。本当にご苦労さん!気持ちいいわ!」そんな言葉に、ややニヒルに構えた表情が崩れました。
 徳島に来て草刈り機の使い方の特訓が待っていようとは、思ってもみなかったでしょう。「草を刈るなら家の草を刈ってよ。家の草が刈れないのなら、近所の草を刈ってよ。近所の草が刈れないのなら、せめて鳥取の草を刈ってよ!」と言われてしまいそうな世の中で、何が悲しいか、徳島の草を刈ることになったひとりの青年に、若きころの私の歩んできた道を重ね合わせていました。
 「それでいいよ。そうやってもがきながら、自分の生き方を見つけていったら・・。もがいた分だけ、素の自分に出会えるかもしれないし・・。」そんなちょっと気恥ずかしい昔を思い出しました。青年長期ボランティアは社団法人・日本青年奉仕協会(東京)が参加者を募集しています。(杉)


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