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徳島新聞「ぞめき」原稿   杉浦良
No.74 タイトル「コムスンショック」

 ついこの前の新聞の片隅に「介護現場離職率二十%超、勤続年数平均四年」とありました。財団法人介護労働安定センターの介護労働実態調査です。介護現場では福利厚生の不十分さと低賃金が実態であり、そして、現在の介護報酬単価ではとても十分な賃金が払えないと事業所からの訴えも目立った、と指摘していました。少し前まで、コムスンの不正と介護事業からの撤退、同社会長の豪邸や自家用飛行機など、ワンセットで注目を浴びたコムスンショックとの違和感は何なのでしょう。
 「今の介護報酬単価で果たしてお金もうけができるか?」という質問に、普通に取り組んでいる方々はノーと言われます。まじめに取り組んでおられる方々は、やる事が多く書類作成や移動などは無償ボランティアになってしまうと嘆かれます。コムスンの処分逃れや虚偽申請が駄目なことは明らかですが、介護事業でお金がもうかるということとはどうも違います。実際、コムスンも昨年暮れの決算では七億円もの赤字で、このあたりが伝えられずに介護問題が一人歩きすることに不安を感じます。そして介護保険より、事業規模の小さい障害者自立支援法の下で運営しているところは、もっと大変な状況があります。
 今から三十年近く前、西日本で最初に出来た重症心身障害児(者)を受け入れる施設では、激務で職員が次々腰痛で倒れ、その補充に学生アルバイトの確保に明け暮れる厳しい状況がありました。劣悪な環境(賃金体系も含めて)ながら、志や思いを支えに頑張る職員の方々の後ろ姿と、そして立ち去る姿、アルバイトをつないで何とか成り立つ福祉現場の厳しさを見させていただいたのです。
 福祉予算の改善に比例してこの問題も影を潜めることになりますが、それと同時に新規職員は他学部より社会福祉専攻、次に教育学や心理学専攻をというように、少しずつ高根の花になって行きました。高根の花になると志や思いといったことより、専門性や資格といったレベルが要求されます。そうであればそれを保障する報酬が必要となります。その報酬をどこでどう捻出するのか?
 他の予算を削り介護や福祉部門を充実させる、税金を増やして予算枠を拡げて充実させる、今の予算枠を維持しながらその中身を再構築する・・。赤字大国日本の今後の選択が問われます。(杉)


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